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チゴズィエ・オビオマの『ぼくらが漁師だったころ』という本
セネガルから帰国して1カ月、その後も国内出張やらケニア出張やらが続き、やっと落ち着いた、、、と思ったのもつかの間、一息もつかないうちに、先週後半から歯が急激に痛くなり眠れない日が2日続いた。セネガルで抜髄した歯の根が化膿しているらしい。一旦抗生物質で落ち着かせて来週から根管治療。やはり途上国での歯の治療はリスクが伴うらしい。。。

さて、以前からずっとアップしようと思っていた記事の一つをアップしよう。

いつ読み終わったかももはや記憶にないのだが、去年9月か10月あたりだったか『ぼくらが漁師だったころ』という本を読んだ。


『The Fishermen/ぼくらが漁師だったころ』
Chigozie Obioma チゴズィエ・オビオマ


チゴズィエ・オビオマの『ぼくらが漁師だったころ』という本_c0116370_17055838.jpg

もう半年も前に読み終わった本の内容は細かく記憶していないのだが、今でも覚えている第一印象は、「アフリカ文学の父、アチェベの『崩れゆく絆』と似ている」ということだった。舞台や話の展開が強烈で、でも神秘的で、それに文体がまさに純文学。読み始めてすぐに、アチェベだ~、と感じたのを覚えている。でも、訳者のあとがきによると、周囲からはアチェベの後継者と言われているが、本人は『やし酒飲み』のエイモス・トゥトゥオラやその他のナイジェリアやギニアの作家の影響を受けていると話しているらしい。

舞台は1990年代のナイジェリア。著者が生まれ育った南西部の町アクレで、アグウ家の物語が展開する。イケンナ、ボジャ、オベンベ、ベンジャミンの4人兄弟の固い絆がある時をきっかけに崩壊へと向かっていく。「邪悪な」川で魚釣りをするなどもってのほか。「汚いどぶ川の漁師ではなく精神の漁師になれ。お前たちは良きものを釣り上げる漁師になるのだ」と父親に言われて兄弟たちは改心したと思われたが、イケンナは違った。魚釣りの帰りに出くわした狂人の予言が自分の運命であるかのように人が変わっていった。

とても重い小説だが、とても読み応えのある小説だった。

オビオマは、『アメリカ―ナ』のアディーチェと同じナイジェリア人作家。まだ33歳と若い。初めて書いた小説がこのクオリティとはすごい。ナイジェリア文学、奥深し。


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by iihanashi-africa | 2019-02-25 17:07 | ナイジェリア | Trackback | Comments(13)
Commented by sgmhmmr at 2019-03-02 01:00 x
やや、これはまた、春休みの課題図書?になりそうな予感…。
Commented by iihanashi-africa at 2019-03-02 19:36
sgmhmmrさんは、すぐに読み終わってしまいそうですよ。通勤中のお手軽読書で。とはいえ内容は重いですが笑
Commented by 兵庫花子 at 2019-03-15 15:18 x
お久しぶりです、兵庫花子電車す。

新人賞に応募するための小説を書いていて
こちらにはまったくのご無沙汰していました。
アフリカの小説、ぜひ読ませていただきたいです。

日本ではアマチュアによる小説執筆がブームに
なっていて、アマチュア向きの小説投稿サイトが
たくさんあり、プロでは読めないような新鮮な
感じの小説もたくさんあります。

私が応募した小説は落選しました。
手直しして今年の3月31日締め切りの
別の新人賞に応募します。
それまでの間、小説投稿サイト「カクヨム」に掲載して
おきます。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888638625

自然の中で生きる人々や、農業畜産などに
関わる人々に興味関心をもっています。
また貴サイトにおじゃまして、厳しい自然の中で
生きる人について学びたいと思います。
Commented by iihanashi-africa at 2019-03-19 18:16
兵庫花子さん、お返事が遅くなりました。「吾輩は豚である」を読みました。第3話くらいから徐々に引き込まれていきました。面白い発想ですね。是非アフリカのサヘル地域で農業をしながら家畜を貯蓄として飼っている人々の話を書いてくださ~い。
Commented by 兵庫花子 at 2019-03-19 19:05 x
ありがとうございます。
Commented by 兵庫花子 at 2019-03-26 15:24 x
でも私がもしアフリカを舞台とした小説を書くとなると
そちらのブログが「質問攻め」になりますよ!

特にフルベ族のような牧畜民の生き方は、調べても分からないことだらけです。

今はヨーロッパ(フランス南西部からスペイン北部にかけて)にいた謎の被差別民「カゴ(cagot)」のことを調べています。いずれ作品化する予定です。

Commented by 兵庫花子 at 2019-03-26 15:26 x
ところで「吾輩は豚である」をお読みいただき
ありがとうございました。

第3章から引き込まれたとのことですが
逆に言えば1章2章は退屈でしたか?

ただいま推敲中・・・
Commented by iihanashi-africa at 2019-03-28 15:48
兵庫花子さん、コメントをいただくたびに私も学んでいます。ありがとうございます。cagotという単語は仏語では偽善者という意味もあるのですが、関係があるんですかね????

「吾輩は豚である」は、読み始めの頃は私にとってはちょっとだけ難しくて(もう少し教養が必要なのかも・・)、でも読み進めるうちに、なんとなく表現の感覚が分かってきて、知的なユーモアが楽しくなってきました。
Commented by 兵庫花子 at 2019-03-29 17:41 x
cagotについてはこちらに詳しく・・・
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10205253130

私はフランス語を全く知らないので、現在の「cagot」の
意味は分かりません。

ただ、Google翻訳で「cagot 」の意味を調べたら
日本語訳では「仏臭い(hotoke kusai )と
出てきました。

かつての「cagot 」への差別を忘れ、cagot がキリスト教徒の一員と扱われず、道徳的に堕落しているとか、異教徒的だとか考えられていたことが、言葉として残っているのかも知れません。
Commented by 兵庫花子 at 2019-03-29 17:48 x
「吾輩は豚である」へのご批評、ありがとうございます。

あの作品、どうも審査員や過去の新人賞の受賞作を気にしすぎて「厚化粧」をさせ過ぎたようです。読み手さまの教養とかは関係ありません。

いろいろな方からご批評をいただき、前半部分はかなり書き直しました。
あまり「原稿の使いまわし」は好きではありませんが、書き直したものを本日、「文藝新人賞」に郵送・応募しました。
Commented by sgmhmmr at 2019-04-11 00:14 x
『The Fishermen』読了。

正直に申し上げますと、刺さり具合としては下記のとおりでした。

『漁師』<『絆』<『アメリカーナ』

一番刺さったのが『アメリカーナ』。
あのボリューム!にもかかわらず、ほんとに一気に読んでしまうほど充実した読書体験となりました。

今回の『漁師』は、というと、こちらも結果的に一気に読んでしまいましたが、なんといっても全編に不吉な影が漂っていて、救いのないモノトーンな感じが、読み終わった今でも後を引いてます。。。

なに批評家気取りのこと言っちゃってんの?
と突っ込まれそうですが、最初から最後まで同じトーン、同じリズムで暗い話が語られていて、もう少しメリハリが欲しかった、と思ってしまいました。。。

M・K・Oと遭遇した際のエピソードとか、暴動から逃れて何とか生き延びたエピソードとか、もっと喜びがほとばしり出て爆発するような、あるいは死と隣り合わせになった後の生命が、より輝く瞬間とか、そのあたりの展開が、他の不吉なエピソードとは異なる筆致で描かれていたとしら、もっと迫ってくるものがあったんじゃなかろうか、と思いました。
最後の再会のシーンですら、それまでの陰鬱な空気を雲散させることができませんでしたから。。。

でも結局のところ、それって、自分にとってはそれほど刺さらなかった、好みとは微妙にズレがあった、だけ、なんでしょうね、たぶん。

キリスト教を信仰しているとはいえ、太古から続く呪術や精霊や土着の神様的な影響が色濃く残る土地の、ある種のほの暗い部分や、政治社会的な意味での憤りとか、そういったもろもろを、この一貫した暗いトーンで、読者に向かって意図的に繰り出し続けているのかもしれないですね。
もし作者があえて意図的にそうしているのだとすれば、それはかなりの成功をおさめているような気がします。。。
読み終わった今でも、まだ、その暗さを引きずってますから、、、。
Commented by iihanashi-africa at 2019-04-15 23:21
sgmhmmrさん、『漁師』<『絆』<『アメリカーナ』は分かるかも笑。私もず=んと暗くなりました。でもこれまで自分の生きてきた世界とこんなのも違う世界の話は、私には珍しく感情移入をあまりせず、一歩引いて読んでたかも。フォレストカーターの『ジェロニモ』、読んでみます!!!

それにしても、ブログをたたまれるのが寂しい。sgmhmmrさん節をいつもクスっと笑いながら楽しんでました。
Commented by 兵庫花子 at 2019-04-27 17:41 x
私の小説の最新作「ブルターニュのCagotsの母」が
できました。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889198137

他の文学賞に応募するため5月末日には消去します。

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