私の祖母、ひろ子おばあちゃんは、現在93歳。腰は曲がっているものの、まだ歩いて買い物にも行け、何より私より物覚えが良い。記憶が薄れないうちに昔の話を聞いておこうと、この2ヶ月の日本滞在中に若いころの話を聞いた。 ただ、やはり記憶が鮮明な部分とそうでない部分があり、なかなか時間軸上の点と点が繋がらない。もしかしたら、前後している部分もあるかもしれないが、私なりに話をまとめてみた。それでもここまで覚えているのはすごい。 誕生 大正8年8月1日、山梨市八幡の水口にて、父孫次郎と母ふでの長女として誕生した。兄忠雄(5歳上)と妹久子(5歳下)の3人兄弟。深澤家は、水口の大半の家と同様、養蚕と米で生計を立てていたが、水田を貸しており、地主として多少の小作米収入もあった。 祖母の実家 堀之内尋常小学校時代 大正14年、祖母6歳の頃、学区内の堀之内尋常小学校に入学した。平成18年に堀之内小学校は廃校となり、最後の卒業生は4名だったが、祖母の時代は1学年一クラス71人。全校児童は400人もいた。なにしろ教室に入りきらずに廊下にまで児童が溢れていたことを、今でも覚えているらしい。 成績も優秀で、毎年度末に成績優秀者数名には優等賞や上賞が与えられており、祖母は毎年優等賞をもらっていた。運動神経も良く、足は速く、ドッヂボールも得意だったが、唯一図画は苦手だった。 当時、小学校の6年間を終えたら、女子は糸取りのため長野県の工場(戦時中は軍事工場になった)まで出稼ぎに送られることが多かった。毎年卒業の時期になると、工場から従業員の募集にやってくる。従業員は一年働くと工場で織られた反物を褒美としてもらえ、その度に休暇をもらって帰郷していた。祖母は、当時反物を持って帰ってくる女子を見て、とても羨ましかった。 しかし、祖母は可能であれば勉強を続けたいと希望しており、学業を続けるにはそれなりにお金がかかるものの、祖母の祖父が、小作米収入もあるためお金を出してやるから学業を続けるよう言ってくれ、石和の蚕業(さんぎょう)学校を受験することが出来た。その頃、男子でも就職する人が多く、ましてや女子で学業を続けた人は片手で数えるほどしかいなかった。 当時、尋常小学校6年間、高等小学校2年間の時代であったが、高等小学校は義務教育ではないため、学区内の日川高校や塩山高校で学業を続けたい人は、6年の尋常小学校修了後すぐに入学でき、また蚕業学校も6年修了後には受験資格があった。但し、蚕業学校を受験する男子は2年の高等小学校を修了しないと受験資格がなかった。当時は、高校へ入学する女子はおらず、入学できないわけではなかったが、祖母の同級生で高校に進む女子はいなかった。 蚕業学校時代 こうして昭和7年に山梨県で唯一の蚕業学校に入学。3年間の教育を受けた。蚕業学校には、男子部と女子部が併設されていた。男子は主に養蚕を学び、女子は養蚕に加え、製糸や真綿作りを習得した。卒業生は養蚕教師や蚕業取締りに就職する人が多かった。一学年一クラス50人程度。 真綿実習 (卒業アルバムより) 祖母は、毎日実家のある水口から山梨市駅まで9kmを歩き、山梨市から石和まで電車に乗り、石和駅から蚕業学校まで3kmを歩いて通学した。帰りは山梨市駅から水口まで歩いて1時間はかかったと話すが、八幡から水口までの標高差300mを1時間9kmの速度で歩くとは相当速い。祖母は長距離走が速く、蚕業学校2年生の時に全校女子1位になったそうだが、この山道通学で足腰が鍛えられたのではないかと話す。ちなみに、2年生の時に1位だったということで、当時の3年生の卒業アルバムに祖母の写真が載っているらしい。
by iihanashi-africa
| 2012-05-06 23:45
| 日本
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