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タクシーから読む庶民の生活
ある日曜日、街中でタクシーに乗った。

「アンバトベのフランス高校まで。」
こう行き先を伝えると、運転手は1万アリアリ(500円)だという。確かにここからフランス高校までは少し距離がある。しかし、今日は日曜日。車通りは少なく渋滞はないはず。そう考えるとやはり高い。
「6千アリアリ(300円)はどう?」
と、思い切った値切りをしてみる。すると、
「アンバトベまでは上りだからガソリンを食うんだ。やっぱり1万だ。」
「じゃあ、8千は?」
「9千ならいい。」
「分かったよ。じゃ、9千ね。」


考えてみれば、たった50円の値切りを真剣にしたことになる。それでも千という単位だと大きな違いに思えてくる。無論マダガスカル人にとってこの差は大きい。だからタクシー運転手も真剣である。まあ外国人値段になってしまうのは避けられない。法外な値段でない限りは少し高くても了承する。外国人乗客を拾ったタクシー運転手の運が良かったのだと考えることにしている。

『上りだからガソリンを食う』。この表現は確かに正しい。ただ、起伏の激しいアンタナナリヴで運転するものにとって、上りと下りの燃料消費量は私たちの想像以上である。なんせ下りはエンジンを止めて走るのだから。

タクシーから読む庶民の生活_c0116370_2272076.jpg私が滞在していたホテルからフランス高校までは、10キロはないだろうか。約30分の道のりだが、その間少なくとも4回はエンジンの停止・始動を繰り返した。それも、車の鍵を使ってエンジンをかけるのではない。車は前進を続けているにも関わらず前かがみになりハンドルの左下に両手を伸ばし、左右に垂れ下がる導線のようなものを合わせてエンジンをかける。この方法はカメルーンでも、チャドでも、ブルキナでも、セネガルでも見た。ただ、マダガスカルは運転しながら何度も繰り返す。ある意味高度な技術である。


タクシーから読む庶民の生活_c0116370_2285182.jpgさて、アンタナナリヴのタクシーは、フランスのメーカー、シトロエン社のものが大半である。特に1949年から一世を風靡した2CV(deux chevaux)が、タナの石畳の道路をかたかたと音を立てて走るのは風情がある。状態のいいものであれば今でも高値で売られるであろうが、残念ながらそのようなものはない。色はどれもベージュ。ドアもまともに開閉できず、座席カバーが破けてスポンジが見えており、ダッシュボードのふたがなく、小汚い手拭いが詰め込まれている。でも、なぜか味がある。


今は自家用車があるため、タクシー移動は滅多にないが、たまにこうしてタクシーに乗って運転手と世間話をするのも面白い。いくらでタクシーを借りていて、平均いくらの売り上げがあって、燃料費も差し引きすると純利益はいくら。それで、何人の家族を養っている。こんな話から都市部のマダガスカル人の生活が少しずつ見えてくる。

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by iihanashi-africa | 2009-03-01 22:14 | マダガスカル | Trackback | Comments(2)
Commented by Buckeymam at 2009-03-18 05:51 x
ドイツもそうだけどタクシーのおじさんってお話好きだよね。料金交渉から話が始まって運転手の家族構成まで話されちゃ苦笑いだけどそこからその国の経済や社会が見えてくるし。一番手っ取り早く
その国を知れるかもね。しかしこの車達、「シブい!」ですな。
Commented by iihanashi-africa at 2009-03-19 06:15
でしょう。かなり味がありますよね。車の中はひどいものですが。様々な職業の方々と話をするのはとても面白いし学ぶことも多いですね。
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