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外部者が「住民が気付いた」ことに気付く
 タカバング村の砂漠化防止技術移転パイロットプロジェクトでは、4つの技術の移転を手助けし、移転された技術が村内でどのように普及されていくかを見守っています。以前、その中の一つ、ザイ農法を紹介しましたが、今日は畜耕グループを紹介します。

外部者が「住民が気付いた」ことに気付く_c0116370_2445950.jpg タカバング村ではミレット(稗)とソルガム(モロコシ)を栽培しますが、両方とも手作業です。まず押し鋤(右の写真)と呼ばれる道具で草を刈り、播種していきます。1ヘクタールの草を刈るのに1人だと1ヶ月はかかります。そのため、土地は十分にあるのに、全てを耕作する時間がありません。そのため、男性5名が耕作時間を短縮できる畜耕技術を取り入れることにしました。私たちは、その研修費を支援しました。

外部者が「住民が気付いた」ことに気付く_c0116370_3393530.jpg 畜耕には牛2頭と犂を用います。固い土を掘り下げるので、普通なら表面を流れてしまう雨水の保水にも畜耕技術は有効で、収穫量の増加にも一役買います。畜耕グループは、技術を習得してからミレットとソルガムの畑で試験的に耕作することにしました。基本的にミレットは砂地土壌で、ソルガムは粘土質土壌で耕作しますが、畜耕技術は砂地土壌には向いていないといわれています。グループメンバーもその知識は、研修の際に講師から得ていましたが、自分たちで実際に試すことにしました。

外部者が「住民が気付いた」ことに気付く_c0116370_2505510.jpg 昨年、砂地の畑では図のように1ヘクタールを4区画に分けて耕作しました。ミレットの収穫量はA:3、B:2束、D:2束で、畜耕と在来農法との収量の違いは見られませんでした。肥料の有無でもそれほどの大差はなかったようです。そのため、今年は赤線で囲まれたBとCの区画で、畜耕技術を用いず、押し鋤によるミレット在来種の耕作をしました。ちなみに、在来種とは通常村人が栽培している品種で、早生種とは早く成長する改良品種です。落花生を耕作した土地は、収穫後に草があまり生えず、このまま栽培を続けたらさらに地力が低下すると判断して、今年は栽培を行いませんでした。今年のミレットの収量は全部で7束で、畜耕グループとして砂地で耕作するメリットを感じず、また、牽引犂を行うことで栄養分のない下の土と栄養価の高い表土を反転させることは、土地を劣化させることにもつながると考え、来年からは、砂地での耕作をやめ、ソルガム栽培に集中することにしたそうです。ソルガム栽培については次の記事で紹介します。

 支援する側の私たちは、砂地では基本的には畜耕が向いていないことは分かっていましたが、そのことはグループには伝えてはいませんでした。もしかしたら、犂の歯の角度を調節するなどして土地に合った畜耕技術を習得するかもしれなかったからです。一つ危惧していたことといえば、土地に良くないことを知らずに砂地で畜耕技術が広まってしまうこと。でも、そんな懸念は無用でした。その土地の様子は農民が最もよく知っています。私たちがアドバイスするまでもなく、農民は私たちの知識以上のことを実験から学びました。農民はそもそも実験能力に長けた人たちです。上記のように、4区画に分けて実験しようと考え出したのも彼らです。私たちは、畜耕技術を習得する研修を支援しただけです。私たち外部者は、今回の結果から、砂地での畜耕が上手くいかなかったと落胆するのではなく、砂地での畜耕は向いていないんだと農民が自分たちで気付いたことに気付き、評価しなければなりません。目には見えない農民の能力に気付くだけの能力が、外部者には求められます。これも昨年、大学の教授から学んだことです。
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by iihanashi-africa | 2008-01-10 03:52 | ブルキナファソ | Trackback | Comments(0)
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