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住民にとって当たり前のことと外部者にとって当たり前のこと
『続入門社会開発-PLA:住民主体の学習と行動による開発』という本を読んでいます。2つの事例を読みながら、思い当たる節が幾つもあり考えさせられました。私が読みながら立ち止まった部分を掻い摘んでまとめてみました。ながーいので時間がある方だけお読みください。

まずは、信頼関係の構築。信頼関係の構築は、相手の文化、習慣、宗教等を尊重し、良好なコミュニケーションを図ることから始まります。相手の話を真剣に聞き、誠実に考えを説明し、適当なユーモアも使って打ち解けた自由な雰囲気の中で、お互いの考え方、経験、視点等を共有することが重要です。感情を率直に表現したり、隠していたほうが有利な情報を敢えて公開することも、信頼関係の醸成に役立つ場合があります。外部者が自分の考えや関心を一方的に話し続け、住民がこれに形式的に応えるような形のコミュニケーションは、信頼関係の構築にほとんど役立ちません。外部者がどれだけ「聞き上手」になって住民の率直な声、意見を引き出せるかが、信頼関係構築の第一歩です。また、住民と外部者が一緒に食事をとったり、共同作業を行うなどの活動は、良好な関係を築くために重要です。自分の家族の写真でも一枚持っていて、外部者がそれを見せながら普段の自らの生活を語る機会があれば、村人たちも「ああ、この人にも生活の場があるんだな」と安心し、双方の信頼に向けて第一歩を築けることもあります。

住民と外部者が信頼関係を築くもう一つのポイントは、外部者が住民の能力を信じることが出来るかどうかです。地域の優れている点、利用できる資源、人材、潜在力や問題点のような開発を考えるために必要な情報は、地域住民自身が一番良く理解しています。途上国の住民は、自分たちの置かれた環境について、驚くほど多くの知識を持っていますが、これは、よく考えれば、何も不思議なことではありません。途上国の複雑かつ多様で制御できない自然・社会環境の中で、住民は出来る限りの工夫を重ねて長年に亘って生きてきた経験があります。したがって、そこに住む人々が長年の経験に基づいた豊富な知識を持っているのは当然のことです。

それでは、なぜ開発に関わる人は自分のほうが住民よりも知識を持っていると思い込んでいる場合が多いのでしょう。これは、住民の「現実の解釈」と開発専門家の「現実の解釈」にずれがあるからです。このずれに気付かない開発専門家は、住民より大きな力を持つからこそ、自分の知識と「現実の解釈」を一方的に住民へ押し付けがちなのです。全く条件の異なる自分の国においての長い実務経験、あるいは高等教育の学位によって威厳をつけられた知識をひけらかし、力のない住民が持つ知識を軽視するといった態度をとっては、自分が学習していけません。高等教育で学んだ単純化・平均化された知識を通してみた「現実の解釈」を、住民たちの住む環境に無理矢理に当てはめようとする結果、住民の「現実の解釈」からみれば見当違いの「上からの開発」が進められるという悲劇も起きてしまいます。しかし、高等教育から得た科学的知識は、ローカルな知識と相互補完関係にあるため、この二つの知識が、どこで、いかに組み合わされるかによって、非常に役に立つ知識となるのです。

そして最後に、これらの知識は全て住民にフィードバックしなければならないということを忘れてはいけません。

例えば、村で調査を行うと、男性グループ、女性グループ、長老やその他の村人と別々に話し合いを持ち、それぞれの意見の違いに興味を持つことがあります。しかし、外部者がそれらの情報を知っておしまいというだけでは、村に何の役にも立ちません。自分が知りたいという知識欲が強いことは、この仕事をする上でとても大切ですが、それが強すぎると住民が置いてきぼりになってしまうことがあります。外部者による聞き取りまたは観察などで得られた地域社会に関する情報は、その地域住民を主体とした開発に役立てるためのものであり、本来その人々にすべて帰属します。当然、外部者によって独占されるものではありません。こういった地域社会に関する情報は、住民たちにとっても意外と新鮮な発見であったり、これまで「当たり前」だったことを事実に基づいて原因解明するような場合もある。これらの情報は、外部者の間でのみならず、地域社会の人々にも常々フィードバックされるものなのです。

ここまで読まれた方は、そんなの当たり前だと思われるでしょう。しかし、開発に関わると何故かその当たり前のことが出来なくなってしまうのです。相手を尊重し、思いやること。やっぱり「思いやり」か。

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by iihanashi-africa | 2007-11-15 01:19 | ブルキナファソ | Trackback | Comments(0)
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