サバクトビバッタのおすすめ本
アフリカのサヘル地域では、バッタが大発生することがある。サバクワタリバッタあるいはサバクトビバッタと呼ばれる。FAOが毎年バッタ予報を出しているのだが、大発生すると人間の手に負えなくなる。

サヘル地域の農業省出先機関の重要な任務の一つがサバクトビバッタの退治である。殺虫剤が大量にストックされており、バッタの発生情報があるといち早く現場に駆け付け対応する。バッタはほぼ毎年発生しており、毎年職員はバッタ退治で各地を駆け巡るのだが、いつもどこかの穀物畑が被害に遭う。バッタの大群に襲われた畑は壊滅的被害を受ける。とくに大発生した年の被害は甚大である。ブルキナファソにいた時は、発生時期に北部の農業省出先機関にアポをとっても、バッタ退治でみんな出払っていると言われることがあった。

1988年に大発生した際には、大西洋を渡り、カリブ海まで飛んでいったそう。これには学者も驚き、当初は誰も信じなかったらしい。それもそのはず、あんなに小さな体で1週間何も食べず4000kmも移動するとは到底考えられないのだから。もちろん多くは途中で力尽きたようだが、たどり着いたバッタたちは、空中の微生物などを食べながら、上手く風に乗れたと考えられている。

このサバクトビバッタの研究者が日本にいるらしい。

そのことを知ったのは、友人からとても面白い本があると教えてもらったことに始まる。それが、前野ウルド浩太郎さんの『孤独なバッタが群れるとき』という本。9月に休暇で帰国する前に、Amazonの買い物かごに入れておいたのだが、購入する前にふと訪れた新宿のブックファーストで、「おすすめ本」として紹介されていたのが、同じ著者の『バッタを倒しにアフリカへ』という本。西アフリカの農業に関わるものとして、サバクトビバッタは最大の関心事項の一つで、私もいろいろ知りたいと思い、両方購入することにした。

c0116370_06283886.jpg

この2冊の本、本当におすすめである。

『孤独なバッタが群れるとき』は、著者の処女作。東海大学出版のフィールドの生物学シリーズなのでかなり学術的なのだが、これが素人の私が読んでもとても面白く読める。この本を紹介してくれた友人が、「学術的なのに読み物としてもとても面白い」と言っていたのがとても良く分かる。そして、著者の人柄が伝わってくる好感の持てる文章で読み進めるのが楽しくなる。

著者はサバクトビバッタの相変異の研究をされている。相変異とは何か。

「世界各地で起こるバッタの大発生には共通の謎があった。それは、大発生の時に覆い掛かってくる黒いバッタは、この時にしか見られないのだ。平和な時には忽然と姿を消しており、草根をかき分けてもいっこうに見つからない。奇襲をかけようにも敵のアジトを誰も見つけることができなかった。黒い悪魔と呼ばれた所以がそれである。バッタはまばらに生息している低密度下で発育した個体は孤独相とよばれ、一般的に緑色をしておりおとなしい。一方、辺りにたくさんの仲間がいる高密度下では、群れを成して活発に動き回り、幼虫は黄色や黒の目立つバッタになる。これらは群生相と呼ばれる。

長年にわたって、孤独相群生相はそれぞれ別種のバッタだと考えられてきた。その後、1921年にロシアの昆虫学者ウバロフ卿が、普段は孤独相のバッタが混み合うと群生相に変身することを突き止め、この現象は「相変異」と名付けられた。

大発生時には、全ての個体が群生相になって害虫化する。そのため群生相になることを阻止できれば、大発生そのものを未然に防ぐことができると考えられた。相変異のメカニズムの解明がバッタ問題解決のカギを握っているとされているのだ。」


著者はこの相変異メカニズムについて研究をしている。
ファーブルに憧れて昆虫の研究をしたいと夢見た少年が、今や多くの発見をして次々に論文を発表するようになるまでに通った道と成長の過程が、物語を読んでいるようで面白い。


『バッタを倒しにアフリカへ』は、光文社新書から出ている。著者は、研究室の中の研究後、モーリタニア国立サバクトビバッタ研究所でフィールドワークを3年間行うのだが、このフィールドワークの様子とモーリタニアの研究環境や生活環境も含めた読み物になっている。エッセイと言った方が適切かもしれないが、もともと文章が面白い方なので、学術的ではなくても楽しんで読み進めることができる。

是非ご一読を。

次回の記事は、「サバクトビバッタを食す」。



[PR]
by iihanashi-africa | 2017-11-14 06:37 | ニジェール | Trackback | Comments(4)
トラックバックURL : http://iihanashik.exblog.jp/tb/28252914
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by sgmhmmr at 2017-11-15 01:29 x
日本にいらっしゃる方のSUZUKIさんから、このブログを教えていただきました。
かつて、アフリカ大陸に憧れたものとして、大変興味深く読ませていただきました。
ワタシの場合は、ケニアとタンザニア、モロッコに、旅行者として訪れたことがあるだけですので、現地で働き、生活されている方とは次元がかなり違っているのだと推測しますが、こちらのブログを拝読していて、それでも懐かしくいろいろなことを思い出しました。
今後も興味深い記事を楽しみにしております。

申し遅れましたが、ご結婚、おめでとうございます!!!
お幸せに!
Commented by iihanashi-africa at 2017-11-15 07:00
sgmhmmrさん、どうもありがとうございます!!!遠く離れたSUZUKIの片割れから、sgmhmmrさんの初海外旅行がケニアだったと聞きました。インドやモロッコなどその後の旅行先も素敵な選択ですね~!ブログで写真も拝見しました。
アフリカ生活も住めば都で、特に不自由なく生活しています。現地で一緒に仕事をしていると、人々の考え方や文化や生活を感じ取れるのが、長期で生活する特権かもしれないです。
また、ぼちぼち記事を書いていきます!
Commented by sgmhmmr at 2017-11-15 07:43 x
当方ののヘタレなブログにもコメントをいただいたようで、ありがとうございます。
主義主張とかは何もなく、しょうもない、意味も無い独り言のような事を垂れ流しておりますが、また昔の旅の写真でも引っ張り出してきてスキャンしようかと思います。
Commented by iihanashi-africa at 2017-11-17 01:48
いえいえ、素のままが十分に面白いので、読み進めてしまいます。「ネコ」の話とか。そういえば、実家でも一輪車をネコって言っていたなあと思って。昔のアフリカの写真のアップ、楽しみにしています!
<< サバクトビバッタを食す トゥアレグ族の21個のシンボル >>