皆さんもきっとご存じのシアバター。保湿効果抜群のバターとして注目され始めたのが90年代。世界で唯一のシアバター生産地域ともいえる西アフリカの生産量は、90年代後半から2000年前半にかけて増加したが、現在生産量は増えておらずむしろ若干減少気味である。
世界のシアの実生産量は年間約70万トン。その内約40%(約33万トン)はナイジェリアで生産されている。第2位がマリで20万トン。第3位はガーナの7万トン。ブルキナファソは4位で5.3万トン。国内生産量の内、大半は輸出されている。日本でも、様々な化粧品やハンドクリーム、ボディークリームに使用されている。 2008年にも一度シアの実の記事を書いたが、その時にはシアの実の価格が2倍近くに高騰し、さらに加工品ではなくシアの実そのものを買い取る業者が増えていた。 シアバターと女性の自立 しかし、現在は違う。女性の自立支援ということで企業も加工技術の向上を支援するところが増え、現地で作るシアバターの質も格段に上がった。 ただ、こうしてシアバターを語る私も、実はシアの実からバターを作製する行程を一度も見たことがない。そのため、シアバターを製造する女性組合をよく知る同僚に社会見学ツアーを企画してもらった。 シアバターを世界的に有名にしたロクシタン。このメーカーのハンドクリーム利用者は多いのではないだろうか。私も愛用している。ロクシタンはブルキナファソの複数の女性組合(業者)からシアバターを購入しているが、その中の一つ、Association Ragussiという女性組合に活動見学に行った。 ワガドゥグから近いTanghin Dassouriという町に作業場がある。 シアの木はこういう木。生長に時間がかかる木で、播種してから実をつけ始めるまでに7年かかると言われている。農家にとっても重要な木で、農地開拓してもシアとマンゴーの木だけは伐らずに必ず残す。 シアの木の葉は波打っていて特徴的なのですぐに分かる。シアの実はこういう楕円形をしている。果実の部分はフルーツとして食べられる。果肉が薄いので食べごたえはないが、ほんのりした甘味がある。とっても美味しいフルーツ!という訳ではないけれど、私の同僚は季節になると出張に行く度に子供へのお土産として買っていた。シアの実の生産期間は4月~8月。シアバター製造は乾期に入った9月~2月に行うことが多い。今はシアバターシーズン。 実を食べ終わると、こういう茶色の種が出てくる。それを乾燥させて更に割ると、このようなアーモンドのような種が出てくる。右の黒い種は質が悪く取り除かなければならない種。大体、3kgの種で1kgのバターが製造できる。 この女性組合が製造するシアバターは有機認証(ECOCERT)されており、利用する実も認証された約20か村の地域からのみ収集している。そのため、いつ、どこから、誰が回収したかが袋にしっかり記述されている。 殻の中身をしっかり洗う。かなり汚れが付いている。 乾燥させる。一旦水にぬらすと質の悪い種は色が更に黒くなるため、取り除く作業が楽になる。 日干しして乾燥させたものを、叩いてつぶす。 これはかつての粉砕方法。 そして、こちらは現在の粉砕方法。一粒一粒手作業でつぶすという気の遠くなる作業だが、機械ではものの数分でこれだけの種の粉砕が終わる。 粉状になったら炒る。 かつては、こうして鍋にいれて炒っていた。 現在は、このような機械で、コーヒーを焙煎するように炒る。熱を加えることで油分との分離がしやすくなる。そして独特の匂いが出てきて色が変わってくる。 利用する燃料はバターの製造過程で出てきた不純物が固まったもの。捨てるところは全くない。 炒ったものを今度はペースト状にする。 これはかつての方法。大変な重労働。 これが、現在の方法。 チョコレート色でなんだかとっても美味しそう。 大量のチョコレート? 今度はペースト状のシアを水と混ぜる。 練り続けると、水と混ざった脂肪分が乳化し、徐々に白色に変化していく。このまま固めてムースあるいはパウンドケーキにでもしたいほど美味しそうに見えてしまう。 水としっかり混ざったら、元のバケツへ戻す。 そして、それぞれの容器に大量の水を流し込み、ゆっくりと手でかき回す。 そうすると、水の中で脂肪分が分離され、ホイップクリームのように脂肪分が浮き上がる。 脂肪分だけを取り除いたもの。 これだとまだ不純物が混ざっている。 この不純物を取り除くため、水と混ぜて洗うのを3回くらい繰り替えす。そうして、右下の灰色のバターが出来る。それでもこの段階で完全には不純物を取り除けない。 バターを取り除いた後の水は、敷地の裏手にある堆肥作製の穴に流し込む。乾くと木炭のように固くなり、燃料として利用できる。 取り出した脂肪分を鍋にいれて温める。バターなので、ただ温めた鍋にいれればすぐに溶けてくる。2時間ほど温めてすっかり溶け切ったら、このまま翌朝まで放っておく。 そして翌朝綺麗な上澄みだけを取り除き、フィルターでろ過したのがこれ。この段階で不純物は鍋の底に溜まり、更にろ過することで、完全に不純物を取り除くことが出来る。シアバターは温かい状態ではまだ液体状。 この段階で、ロクシタンから送られてきた特別な段ボールとビニール袋に25kgずつ入れて常温で固める。 固まるとこんな感じになる。 これが空輸される。 ロクシタンのポスター発見。 実は、シアバターは食用でもあることをご存じだろうか。ブルキナファソでは、料理に使う人も多いという。私は食べたことはなかったのだが、この日初めてサツマイモにつけて食べてみた。シアバター独特の匂いがあるため、若干抵抗を感じながら食べたが、慣れれば美味しいと思うかもしれない。ちなみに、シアバターはココアバターのかわりにチョコレートに利用されているヨーロッパの国もある。 このAssociation Ragussiは女性約20名のグル―プ。意外にもメンバーは少ない。これだけ機械化されていたら20名で十分だが、それでも分業されていて、手を休めている女性がおらず、とても感心する。この女性グループは今年約20トン輸出したそう。 普段皆さんが使っているシアバター入りのハンドクリームの原料は、こうして女性たちの手によって製造されている。 ちなみに、シアの果実についても記事を書いているので、こちらもどうぞ。 にほんブログ村
by iihanashi-africa
| 2014-11-25 08:27
| ブルキナファソ
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Comments(2)
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ゆうき
at 2016-09-12 14:07
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とても価値のある記事だと思います。ありがとうございます。
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iihanashi-africa at 2016-09-12 23:55
ゆうきさん、嬉しいコメントをありがとうございます。今後も気になった話題をアップしていこうというモチベーションが高まります。本当にありがとうございます。
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