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Cine Droit Libre5: 2008年コメ価格高騰の構造

Cine Droit Libreドキュメンタリー映画祭の最終章。

あまりに興味深い映画が多かったために、5回にも亘って記事を書いてしまった。こういう機会は、アフリカにいるからこそ得られる特権だと思う。

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『Main basse sur le riz(コメを脅かすもの)』

監督:Jean Crépu(フランス)
84分、2011年


2008年にコメの価格が高騰して、アフリカ各国でデモや暴動が起きたことは、まだ記憶に新しい。日本は、コメを輸入に依存していないため、2008年の価格高騰の影響を他国ほど受けなかったが、世界には主食であるにもかかわらず70%を輸入米に頼っている国が沢山ある。とりわけアフリカのコメ消費量は、人口増加も相まって急激に増加しており、国際市場価格の変動が激しいと社会不安につながる可能性もある。そして2008年にこの現象が起きてしまった。

2008年の春、数ヶ月の間にコメの価格が2倍、3倍、ひどいところでは6倍にまで跳ね上がった。私はこの時期ブルキナファソにいたのだが、人々特に女性が、鍋とスプーンを持って「We are hungry」と叫びながら街中をデモ行進していたのを覚えている。

2008年春のブログ記事
静かな「津波」
TBS 『世界最貧国は訴える ~食糧危機の深層~』


では、2008年のコメ価格高騰は何故起きたのか。


このドキュメンタリーは、コメ価格高騰が起きた構造を解明している。当時は、タイやインド等のコメ輸出国の収穫が不況だったからと聞いていたが、そんな単純な仕組みではないことが分かる。実は自国民用には十分なストックがあったにも関わらず輸出制限をかけた最大の輸出国タイ政府の方針、ジュネーブに拠点を置く仲介業者の意図、アフリカ各国の独占輸入業者の思惑、そして今回最大のアクターともいえる最大の輸入国フィリピン政府の動きとベトナムの輸出業者との関係。

映画では、全てのアクターにインタビューを試み、2008年に一体何が起きたのか、なぜこのパニックが起こり、誰が利益を得たのかを明らかにしようとしている。とても興味深く、ストーリー全てを書いてしまいたいほど。

世界のコメの輸出量は片手で数えられるだけの国で9割以上を占める。つまり、ほんの4,5か国が世界のコメ輸入国の人々の生活を支えている。映画の中で、世界銀行の農業エコノミストが話していた。「2008年の春、大輸出国は輸出国としての責任を果たしていなかった」

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このドキュメンタリーは、FIPA映画祭で金賞をとり、また、フランスのTVチャンネルArteでは、2010年の放映ドキュメンタリーの最高視聴率を獲得している。

私自身が、農業分野に関わる仕事をしているということもあるが、このドキュメンタリーは大作だと思う。で、DVDも販売されていることが分かったので、早速購入してしまった。


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by iihanashi-africa | 2013-07-17 15:45 | ブルキナファソ | Trackback | Comments(3)
Commented by Sato at 2013-07-24 17:34 x
Satoです。興味深く読ませていただきました。タイの食料輸出禁止の決定が、かなり予断を含む物で米価格の暴騰に寄与していたということまではしっておりましたが、フィリピンやベトナム、そしてアフリカの独占輸入業者の思惑が大きく関与していたとは知りませんでした。そのDVD、いつの機会にか見せていただければと思います。ただ、フランス語だとSatoにはわからないかな?という不安もありますが。
Commented by iihanashi-africa at 2013-07-27 01:36
Satoさん、ありがとうございます。もうそろそろ日本の実家にDVDが届く頃。英語字幕付きか確認できたらまた連絡しますね。
Commented by Sato at 2013-07-29 17:23 x
是非よろしくお願いします。
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