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Cine Droit Libre4: コンゴのMoïse Katumbiという人
Cine Droit Libreで上映される映画は、どれも公開されたばかりのホットな映画ばかり。下に紹介するドキュメンタリーも2013年4月にベルギーで初公開されたものだ。フランスでも公開されたが、コンゴで上映されることはないだろうとされており、これまた物議を醸しているドキュメンタリーである。それを、アフリカのブルキナファソでいち早く上映するということは、とても貴重なことだと思う。

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『L'irrésistible ascension de Moïse Katumbi(太刀打ちできないほど飛躍的に登りつめた男、モイーズ・カトゥンビ)』

監督:Thierry Michel(ベルギー)
58分、2013年


コンゴ民主共和国にMoïse Katumbiモイーズ・カトゥンビという方がいる。

コンゴにいないとこの方を知る機会はないかもしれないが、コンゴの南東部に位置するカタンガ州の州知事で、絶対的人気を誇る。政治家であり、ビジネスマンでもあり、世界第2位にもなったことのあるプロサッカーチームTP Mazembeのオーナーでもある。今、コンゴで最も稼いでいる人である。現在48歳。コンゴ人の母とイタリア系ユダヤ人の父を持つ。もともと父のビジネスを引き継ぎ漁業と運送業で成功し、鉱山や飲食業等、様々なビジネスを展開している。

政治家としてのキャリアは2006年に始まる。国会議員選挙に出馬し、最多得票数で当選した。そして2007年1月に、カタンガ州知事選挙に出馬し、90%の票を獲得して当選した。

カタンガ州は、豊富な地下資源を有しており、特にレアメタルを産出する。そのため、資源をめぐって独立後も大規模な内戦が起こっている。地理的には、首都から最も離れた忘れられた州のようにも見えるが、中央政府にとっては危険をはらんだ重要な州である。

そのカタンガ州の州知事になったカトゥンビ氏は、まず国境の税の徴収を徹底し、鉱山業者の労働者の労働条件の改善を図った。様々なインフラも整備された。恐らく2007年以降、カタンガ州は相当発展したのだと思われる。しかし、インフラ整備についてもどこからお金が出ているのか分からず、徴集された税もどのように利用されているのか不透明な部分が多いようだ。あるジャーナリストは、「彼が行っているのは政治ではない、贈与だ」と批判していた。一歩外に出ると、現金をばらまく。彼の人気の理由の一つはここにある。ただ、話が上手く、周りを魅了する何かがあることも否めない。

次期大統領はカトゥンビ州知事ではないかとの声もある。これだけの人気があったらあり得る話かもしれない。しかし、政治とビジネスをこれだけ混同する人がトップになると、国としては非常に危険な気がする。それでも、今いる大して何もしていない政治家に比べると、ずっとよいと評価する人もいる。


カトゥンビ氏について(Wikipedia仏語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Mo%C3%AFse_Katumbi_Chapwe

映画についての記事(Jeune Afrique):カトゥンビ知事と監督との確執
http://www.jeuneafrique.com/Article/ARTJAWEB20130411083820/


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この日、上映後の討論会に登壇したのは、コンゴ人映画ラスコニ・ニシンブLascony Nysymb氏。彼のコメントで印象に残った部分がある。

「アフリカには真のビジネスマンは存在しないと言っても過言ではない。今成功している会社の経営者は政治に大きく依存している。あるいは、自ら政治を操りビジネス成功を勝ち得ている。そういう会社は、政権が倒れると会社も潰れる。そのような脆い会社を真の会社と言えるだろうか。」

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帰宅後に、Thierry Michel監督について調べたら、1999年に『Mobutu, roi du Zaïre(モブツ、ザイールの王)』というドキュメンタリー映画を撮っていた監督だった。この映画は、私がフランスにいた1999年に映画館で見た映画。当時は、仏語も堪能ではなく全ての内容を把握できなかったので、もう一度見たくなった。


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by iihanashi-africa | 2013-07-12 22:45 | ブルキナファソ | Trackback | Comments(0)
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