『Boy Saloum』
監督:Audrey Gallet(フランス) 72分、2012年 2012年3月、セネガル大統領選でワッド前大統領が敗れ、マッキー・サール大統領が政権を奪取した。選挙前や期間中に反政府デモ隊と憲兵隊との衝突はあったものの、クーデタではなく民主的に政権が交代したことは世界的にも評価され、アフリカの民主国家の代表国の一つというイメージを確かなものとした。 しかし、この政権交代の背景に「Y’en a marre」という運動があったことをご存じだろうか。この運動がなければ、ワッド前大統領は憲法を改正し、そのまま政権に居座り続けたかもしれない。「Y’en a marre」とは、「もううんざりだ」という意味。 この運動をリードしたのがKeur guiクルギというセネガルのラップ音楽グループである。ドキュメンタリー『Boy Saloum』は、Keur guiの歩んできた道と「Y’en a marre」運動中の彼らの動きを追ったものである。 Keur guiは、ThiatとKilifeuのデュオ。1996年に二人の出身地であるKaolackカオラックで結成された。結成当初から、不当で不平等な社会への不満と抵抗を歌い、カオラックでの影響力は相当のものだったらしい。このドキュメンタリーは「Y’en a marre」運動が始まる6年も前の2005年に撮影が開始している。Audrey Gallet監督が、彼らの影響力に惹きつけられてKeur guiというミュージシャンを撮影することから始まったのだ。「Y’en a marre」運動を追う目的で撮影が開始されたわけではないのだ。監督が映像に残したくなるほど、彼らは魅力的だったのだと思う。 ダカールに上京してからも、彼らの人気と影響力は増していった。そして、2011年1月、毎日続く停電と権力にしがみつく大統領にうんざりした彼らは、若いジャーナリストFadel Barroと彼らの友人Safiaのサポートもあり、「Y’en a marre」運動を立ち上げた。 彼らは、数ヶ月で全国各地の35万人の若者のネットワークを作り抗議運動を開始。最終的にワッド前大統領退陣まで追い込んだ。 写真の右端がThiat、右から二人目がKilifeu 映画上映後に、Keurguiの二人が登壇して討論会が行われたが、これまた鳥肌が立つほど彼らに魅了され、特にThiatの論理的で説得力のあるスピーチには、観客全員聞き入ってしまった。問題の根底を理解していて、納得のいく主張が出来る人だった。本当にカリスマ性があった。 彼らだからこそ動かすことのできた運動だったにちがいない。 言い換えれば、他のミュージシャンではこれだけの大きな運動は起こらなかったと思う。 Thiat本人が言うに、マッキー・サール政権で大臣にならないかと打診を受けたらしい。しかし、「自分は大して学校も出ておらず、どうやって大臣を務めるのだ。自分の居場所は音楽なのだから、音楽を通じて主張していく」と断ったそう。「今回は、ワッド前大統領を退陣させるための運動であって、サール大統領を応援していたわけではない。今後は現政権の動きを見ながら、必要を感じたらまた運動を起こす」と話していた。 この日、彼らの話を聞いたブルキナファソの若者は、どう感じたのだろう。 にほんブログ村
by iihanashi-africa
| 2013-07-02 06:34
| セネガル
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