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Cine Droit Libre1:長期政権と映画検閲
一昨日6月23日から、ワガドゥグでは第9回Cine Droit Libreフェスティバル(権利の自由シネマフェスティバル)が始まった。

今年のテーマは「Où va l’Afrique? (アフリカはどこへ向かう?)」
アフリカは正しい方向に向かっているか。目指す方向を訂正すべき国はないか。政治的にも経済的にも影響力を増してきたアフリカ。若年人口も増加している。

その中で、36本のドキュメンタリー映画が、アフリカの政治、社会、環境、経済の問題を投げかける。タブーとされているテーマを取り上げて、自国で上映禁止となった映画もある。映画というのはそれほど影響力があるのだ。それも、今回は全てドキュメンタリー。説得力は半端ない。

昨日、一昨日と3本のドキュメンタリーを見たが、どれも素晴らしい完成度で考えさせるものばかり。現実にこんなことが起きているのかと思うと、身震いする。ほとんどの映画の後に、監督や有識者が登壇して討論会も行われる。この有識者の人選も素晴らしく、私自身も学ぶことの多い討論会が繰り広げられている。

皆さんに知ってもらうために、出来るだけ多くのドキュメンタリー(=出来事)をブログで紹介したい。

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『Le Président(大統領)』

監督:Mr Jean Pierre Bekolo(カメルーン)
64分、2013年


この映画は、Cine Droit Libreのオープニング式典の招待映画。ドキュメンタリーではなくフィクションだが、現実のストーリーをもとにシナリオが描かれている。カメルーンで公開前に物議を醸した映画だ。カメルーン国内では、小さな上映場で流した1回を除いて、政府からの圧力で上映許可が下りていない。

カメルーンの現大統領は政権について既に30年。今年80歳。
健康上の問題もあるのかもしれないが、1年の半分あるいは3分の2を国外で過ごしていると言われている。それも、側近以外は誰もどこにいるか分からない。上映後の監督の話では、映画の撮影期間にも、大統領は中国へ数日間公式訪問した後、2ヶ月間カメルーンへ戻らず、いったいどこへ行ったのかとメディアで話題になったそう。映画も、大統領が行方不明になりメディアで様々な憶測が流れるストーリーだが、映画で考えていたようなことが現実に起こり、監督自身も現実は想像をはるかに超えていたと思い、シナリオを途中で書き直したという。

カメルーンは、仏語圏サブサハラアフリカの中で最も教育レベルが高い国だと思う。しかし、修士や学士を持っていても就職先がない。大学を出てバイクタクシーの運転手をする人も珍しくない。若者の失業率が高いのはカメルーンに限ったことではないが、これだけ教育レベルが高い国で本当にもったいないと思う。『Le Président』は、この現実を映像で突きつけている。

カメルーンで、現大統領の退陣後の政治について公に話すことはタブーである。しかし、現在80歳の大統領がこのまま永遠に居座ることは考えられない。もうそろそろ目を逸らさずに現実を見つめて考える時期に来ていることを映画は訴えている。


『Le Président』の評論(仏語)
http://www.africultures.com/php/index.php?nav=article&no=11568

Bekolo監督について(仏語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Jean-Pierre_Bekolo


映画の討論会で、Bekolo監督がカメルーンのある若い映画監督の話をした。
Richard Fofié Djimeli監督
今年、『139…Les derniers prédateurs(139年...最後の略奪者)』という映画を製作したまだ学校を出たばかりの若い監督だ。

この映画は、ある国の独裁者が、息子の代、さらにその息子の代まで政権を引き継ぎ、139年間一国を支配するというフィクション。これを聞くとカメルーンのお隣の石油で稼いでいる国を思い浮かべる。

Djimel監督は、今年3月11日にカメルーン当局に拉致され、11日間監禁されて拷問を受けた。全く食事ももらえず、指も一本失い、最後殺されそうになったところを、当局の一人に救われ逃げたとのこと。Djimel監督は、今恐怖で何もすることが出来ず、映画公開のために彼をサポートしていた周囲の人々も自分にも被害が及ぶことを恐れて離れて行ってしまったとのこと。若く熱意のある優秀な監督がこうしてキャリアをつぶされるのは見ていられないとBekolo監督が話していた。

今この時代にも、このような残虐行為が行われているのです。

Djimel監督拷問の記事(仏語)
http://www.commeaucinema.com/afp/cameroun-un-cineaste-dit-avoir-ete-enleve-et-torture,289750

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上映後の討論会の様子(↑)。
3人の登壇者は、左からワガドゥグ大学のLuc Marius Ibriga法学部教授、Bekolo監督、野党UPCのZephirin Diabre党首。この場に野党党首が出てくるのがすごい。映画の質問より、ブルキナファソの政治の質問に偏ってしまったが、観客は興味深い答弁を聞けて満足だったと思う。


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by iihanashi-africa | 2013-06-26 06:57 | ブルキナファソ | Trackback | Comments(0)
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