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「アフリカ映画の都ワガドゥグ」~フェスパコ便り 3
FESPACOでもう一本印象的だった映画についてH.N.E.さんが書いた記事をもう一つだけ紹介したい。


「今回のフェスパコにはマリからは4作品参加していますが、その中で最も注目を集めたのが、イブライマ・トゥーレ監督の「Toile d’Araignées (蜘蛛の巣)」という長編映画です。この映画はイブライム・リーというマリ人の自伝的小説に基づいているもので、1970年代のムッサ・トラオレ軍事政権による圧政下の社会を描いていますが、今日現在戦争状態にあるマリを目の前にして、このテーマが未だ現実性を持っていることを感じざるを得ません。

映画は、農村部と都市部それぞれで、自由を獲得するために闘う二人の人物を中心に展開されます。17歳のマリヤマは親の決めた強制的な結婚を拒否し、投獄されます。娘が裕福な老人と結婚することで金銭的な利益を得ようとする親のプレッシャーや軍人からの拷問にも負けず、彼女は自分の意思を曲げず、忠誠を誓った恋人の元に戻ることを夢見て日々の辛苦に耐え続けます。同時に、首都バマコで軍事政権に反対し、汚職や圧政を批判する文書を配布して一般市民を啓発しようとした学者のヨロ(原作者のイブライム・リー自身)も、一緒に運動していた若者が拷問の末に首謀者の名を軍部に伝えてしまったことから捉えられ、マリヤマと同じ牢獄に連行されます。牢獄にいる人々は皆、独裁の生み出した「蜘蛛の巣」のような社会にがんじがらめにされ、生まれてから自由を享受することもなく、正当な裁きを受けることもなく、人間としての権利を否定されたまま、独裁政治の犠牲者として生を終えていくことになります。

強制結婚という女性への暴力、司法当局、警察、軍隊の汚職に対する監督の批判は、全てのマリ国民、そして全てのアフリカの人々に伝えたいメッセージとなっています。同じ人間として、ここまで生きる権利を否定されてよいものか、あまりに過酷で不平等な人生を目にし、聴衆も絶望的な苦悩を味わいますが、監督は、「これが現実であり、サヘルの辛い生活なのだ」と言い切ります。これが初めての長編となったトゥーレ監督。撮影期間はたったの6週間、プロの俳優は一人だけ、予算は1億8千万ユーロ(約3300万円)の小さな資金でマリの根深い問題に立ち向かいました。「私はサヘル人だ、サヘルでは希望なくして生きていけないのだ」。」



第23回FESPACOは3月2日に幕を閉じた。
クロージングセレモニーおよび授与式は「8月4日スタジアム」で開催され、こうして生で観覧する機会ももうないと思い私も参加させてもらった。

「アフリカ映画の都ワガドゥグ」~フェスパコ便り 3_c0116370_736056.jpg


「アフリカ映画の都ワガドゥグ」~フェスパコ便り 3_c0116370_7363597.jpgセレモニーにコートジボワールの音楽グループ「Magic System」が来ると聞き、一度は生で彼らのコンサートを見てみたかったためにクロージングに参加したのだが、普通のコンサートとは異なり聴衆が少なく、舞台とと聴衆があまりにも離れており、歌う側としても一体感がなくアドレナリンが出なかったと思う。これだけの大物を呼んだのだからもう少し見せ方を考えてほしかった。ちょっと残念。


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クロージングセレモニーには、大統領も出席し、自らグランプリを授与した。大統領の隣は、グランプリをとったセネガル人アラン・ゴミス監督。


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今回のFESPACOで見逃した映画が多々ある。
グランプリ映画や第3位のLa Pirogue(セネガル)も見ていない。

特に見たいのが「Meme pas mal」というドキュメンタリー部門のグランプリ。
監督であり主人公であるチュニジア人Nadia El Faniの、イスラム主義に対する抵抗、そして彼女自身の癌との戦いを描いたもの。芸術的な創造性と政治闘争に関する表現の自由を主張したドキュメンタリーで、現在本国チュニジアでは上映禁止となっている。


どの映画もいつかテレビで放映されないかなあ。。。


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by iihanashi-africa | 2013-03-13 08:01 | ブルキナファソ | Trackback | Comments(0)
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