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マリ北部のイスラム過激派グループとは
1月11日にフランスの軍事介入が始まってから、ワガドゥグ上空は軍用機が飛び交う音が頻繁に聞こえるようになった。

私の家は、旅客機離着陸の通り道の下に位置しているため、ゴーーーという音が良く聞こえる。しかし、最近は聞きなれている旅客機の音だけではない別の飛行機の音が聞こえる。ワガドゥグの軍基地が仏軍の軍用ヘリやその他軍用機の拠点の一つとなっている。

お隣マリのこととはいえ、これだけ軍用機の音が聞こえると、やはりいい気分はしない。

ワガドゥグのフランス大使館周辺は夜間通行止めになっている。フランス文化センターの周辺も警備が厚くなった。


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日本ではあまりマリ国内の話題は詳細に報道されていないが、今報道されているイスラム過激派対マリ軍&仏軍&ECOWAS軍という単純な構造ではなく、イスラム過激派も幾つかの勢力が集まったグループであることをご存じだろうか。

現在マリ北部で戦闘に関わるイスラム過激派グループは、AQMI、MUJAO、Ansar Dine、Boko Haramの4つの勢力の連合体である。

AQMI(Al-Qaida au Maghreb islamique:英語ではAQIMという略が使われている)は、前身ともいえるGSPS時代を含めると長いが、AQMIの組織自体は2007年に設立されている。4つの組織の中で最も長く活動する組織で、これまでにサヘル地域で発生した誘拐事件の中心的グループ。リーダーはアルジェリア人だが、活動範囲はかなり広範囲にわたる。先日のアルジェリアの悲しい事件の主犯格は、AQMIから離脱して独自の勢力を形成した人物である。

MUJAO(Mouvement pour l'unicité et le jihad en Afrique de l'Ouest)もまた、AQMIから離脱した一部が2011年半ばに設立した勢力。アルカイダ系のイスラム教過激派。

Ansar Dineは、2012年初めに組織されたマリ北部に拠点を置くトゥアレグ中心の反政府武装組織。しかし、シャリア(イスラム法)に基づくなど、かなり原理主義である。

4つ目の勢力Boko Haramは、私はよく知らないのだが、ナイジェリアを拠点とする組織で、2002年に結成されているということは、最も活動期間は長い。時々ナイジェリアでキリスト教の教会での爆弾テロのニュースを耳にするが、この勢力が関わっているらしい。シャリアの採用という点で、上記3つの組織と目的を同じにしている。


一方、これらの勢力に加え、MNLA(Mouvement national pour la libération de l'Azawad)という勢力がある。90年代のトゥアレグの反乱以降、リビアに逃げた反政府トゥアレグ勢力が、2011年、マリ北部Azawadの独立を求めて結成した組織である。リビアのカダフィ政権崩壊後、多くの武器を持ってマリ北部に戻り、2012年1月から北部の都市を制圧し始めた。クーデタに至るまでに様々な出来事があるが、MNLAの北部制圧活動開始が、今回のマリ情勢の火種だったと思われる。




2012年3月22日のクーデタ以降、MNLA、AQMI、Mujao、Ansar Dineは北部の街Kidal、Gao、Tombouctouと次々に制圧した。Tombouctou制圧では、世界遺産に登録されている遺跡も一部破壊されたとの報道があり、一度は訪れてみたい街の一つにもう今後何年あるいは何十年も行くことが出来ないかもしれないことを思うと悲しくなった。

しかし、これらの都市の制圧後に、MNLAと他の3つの勢力の目的が異なることが明らかになり決裂した。つまりMNLAは北部独立が主目的であるのに対し、他の勢力はシャリアをベースとする国家設立を目的としている。これ以降、MNLAは今回の戦闘からも一線を置いており、むしろ仏軍へガイドとなることを提案している。


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現在、仏軍が2000名の兵士を配置しており、西アフリカの各国からも地上援護部隊が送られている。アフリカで最も頼りにされている(ある意味、厳しく冷酷な軍)のがチャド軍。各国100~500人の派兵を決定しているところ、チャドは2000人を派兵した。

既に空爆や地上戦で、イスラム過激派グループの南進は止まったようで、マリを南北に分ける境界に近い都市は、徐々に仏&マリ軍により奪還されつつある。

マリ北部のイスラム過激派グループとは_c0116370_15361445.png


しかし、問題は今後北部の主要都市を奪還するまで長期戦となる可能性があること。そして、主要都市を奪還したとしても、アルカイダ系組織同様、これらのイスラム過激派勢力もどこかで身をひそめながら活動を続けていくであろうこと。

なんとなくチャドの政治を思い浮かべる。
チャドには、数えきれないほどの反政府武装勢力が存在する。結合・分裂を繰り返しながら、今となってはどの勢力が生き残っているのかよく分からない。そして忘れたころに突如活動を開始する。

マリも、今は仏・マリ軍という共通の敵があるために連合軍を結成しているが、一旦この戦闘が沈下すると、それぞれの活動地で時期をうかがい、また内部分裂も出てくるかもしれない。そして複雑化することも考えられる。

この状況、どのような終結を迎えるのだろう。

しばらくは注意してみていくことにする。


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by iihanashi-africa | 2013-01-24 08:45 | ブルキナファソ | Trackback | Comments(0)
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