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国際免許証の署名がローマ字筆記体の理由
つい先日、国際免許証を更新した。アフリカも国際免許証が使える国が多く、わざわざ現地の免許を取得せずとも運転が可能である。
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久しぶりに国際免許証を取得しに行き、かねがね疑問に思っていたことをまた思い出した。

それは、「国際免許証の署名がローマ字の筆記体でなければならないのはなぜか?」ということ。

海外で生活していると、自分の署名(サイン)を求められるケースが多い。署名は大抵パスポートの署名と照合されるため、パスポートと同じ署名を使う。私の場合、漢字を少し崩したようなもの。契約書から銀行からその他諸々の署名はパスポートと同じ署名を使っている。基本、パスポートのサインが私の唯一のサインであり、それ以外のサインなどありえない。

国際免許証は、取得する際に「自分のサインを書いてください」と言われるのだが、必ずローマ字の筆記体で書くように言われるのだ。私は、今まで自分の署名をローマ字の筆記体で書いたことなどなく、所謂私のサインではないサインを署名欄に書くことにいつも抵抗を覚える。書きなれていない筆記体で自分のフルネームを書き、う~~~~ん、これは私のサインではないと毎回のように感じる。

同じ疑問を持っている方は世間に沢山いるらしく、検索すると多くのサイトがヒットするのだが、その中に内閣府のサイトがある。

「規制改革ホットライン検討要請項目の現状と措置概要」
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/hotline/siryou2/keisatu.pdf

2014年に「国外運転免許証の署名に漢字をつかえるようにすべき」という提案事項が出ている。

「国外運転免許証の署名を筆記体のアルファベットで記入するように求める規制は、漢字での署名も可としているパスポートの署名と一貫性がなく、早急に見直すべきである。 署名はパスポートやクレジットカードと同一のものを使用するのが面前での本人確認に使用する観点から も適切と考えます」という内容だった。

それに対する警察庁の回答は、「条約附属書10において、国際運転免許証の記入事項はラテン文字又はいわゆる英国風の筆記体文字で記載することとされていることを踏まえ、道路交通法施行規則別記様式第22の7においても、我が国において発給される国際運転免許証(道路交通法上の国外運転免許証)についてロー マ字つづり又は英語で記載することとしているものです。そのため、国外運転免許証に日本語で署名を記載した場合、国際運転免許証としての要件を満 たさなくなり、条約締約国で自動車等の運転ができなくなることから、対応は困難です」というものだった。

この回答から一つ分かることは、ラテン文字(=ローマ字)または英国風筆記体文字ということ。つまり、必ずしも筆記体である必要はない。筆記体でも英国風と書くとローマ字筆記体をさすのかな。
さて、海外でも国際免許を取得するとき、サインはローマ字か筆記体と言われるのだろうか。。。それこそ海外の方が印鑑ではなくサインの文化のため、「なぜサインにそんな規定が?」と疑問に思う人がさらに多そうだが。それに、日本では筆記体を学校で習うけれど、欧米で筆記体を書ける人ってそんなに多くない気がする。筆記体の署名を義務付けているのは実は日本だけ、なんてことはないだろうか。。。


その後、こういう記事も書いたのでご参考まで。
パスポートを更新して思ったこと。「署名」と「サイン」の違い。


あと、いつか見直すことがあったら、この大きさもどうにかしてほしいなあ。パスポートよりも大きいし、財布に入らないし、持ち歩くのが大変。お財布に入る大きさじゃないと、たまに忘れてしまう。でも、国際免許の大きさも条約の規定。。。

ちなみに、国際免許証の最後のページはフランス語で記述されている。これも条約の中で免許証の体裁が定められており、最終ページはフランス語で書くと決められているかららしい。
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*******************************

2年前に記述したこの記事だが、最近(2020年2月)になってsgmhmmrさんから興味深いコメントをいただき、条項の原本を確認した。
https://treaties.un.org/doc/Treaties/1952/03/19520326 03-36 PM/Ch_XI_B_1_2_3.pdf
このサイトの54、55ページにあるAnnex10に国際免許証の様式が規定されていて、筆記体についてはこう記述されている。

英語:The written remarks shall be written in Latin characters or in so-called English script.
仏語:Les indications manuscrites seront toujours écrites en caractères latins ou en cursive dite anglaise.

日本語に訳すと、「手書きの記載事項はラテン文字またはいわゆる英国風筆記体文字で記載すること」とある。

ふむふむ。
ん??
あれ??
Written remarks、indications manuscrites、手書きの記載事項、、、何か引っかかる。
ということで、各国の国際免許の写真を探してみた。

個人情報を塗りつぶして拝借。

フランスの国際免許証。どの国も1ページ目には公安委員会代表のサインがあるが、日本は代表もしっかり筆記体サイン。でも他国のサインは各自独特のサインであることが分かる。
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オーストラリアの国際免許証。
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イギリスの国際免許証。
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韓国の国際免許証。韓国はローマ字署名とハングル文字署名と両方みつかったが意外とハングル文字署名も多そう。そもそもこの写真のように行政側のサインがハングルというのも結構ある。また、韓国の道路交通公団のサイトでは、国際免許証とパスポートの氏名のローマ字綴りが一致しない、または署名が一致しない場合は効力が認められないと記述されている。
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やはりサインはひとそれぞれ。各国の国際免許証を見ながら、日本はやはり上の条項文の解釈が他国と違うのではないかと思った。

日本もかつてはそうだったようだが、他国の国際免許証には、まだ手書きの部分が多い。名前やら発行日、発行場所など、大半の記載事項が手書きの国もあるようだ。その場合、読みやすいアルファベット(つまりラテン文字)で書いてもらわないと他国で判読できず、条約でも規定しておく必要がある。しかし、個人のサインは「手書きの記載事項」に含まれないのが、少なくとも欧米諸国の解釈なのではないか(個人の見解ですが)。サインはひとそれぞれで、筆記体のようなサインの人もいれば、記号のようなサインの人もいる。それは、変えることができないアイデンティティという理解だと思う。

やっぱり、日本の解釈は他国とも合っていないんじゃないかなあ。。。



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by iihanashi-africa | 2018-01-12 15:39 | 日本 | Trackback | Comments(6)
Commented by 大和民 at 2019-08-06 01:45 x
こんにちは

私も最近日本で国際免許を作成して、サインをフルネームで書かされ同じように疑問に思いましたが、謎ルールがあったのですね。ただ多くの日本人は、署名(サイン=記名+押印)と記名(プリント/楷書)の区別が出来ていない為、混乱を招いていると思います。

米国等の書類は
Sign 署名 (固有のものなら何でも可)
Print (or type) name of signer ブロック体の記名または、タイプ
と2構成となっており、この署名部分はキャッシュカードなどのサインとは同じでないと面倒な事になります。

国際免許も記名代わりに名前がタイプしてあるので、本来なら固有のサインを記入するのがIDとして正しいものかと思います。(米国の免許で国際免許を作ったときは、サインでOKでした。)

まあ日本の免許証こそ、空白を使って名前と生年月日を英語でもタイプしてくれれば、年齢確認用に十分IDとして役に立つのですが、こういう慣習を変えるは利権の問題でやらないんでしょうね。
Commented by iihanashi-africa at 2019-08-07 08:26
>大和民さん
コメントをありがとうございます!全くおっしゃる通りですね。日本人はサインの文化がないですからね。私も初めて外国で自分の「サイン」をするように言われたときは慣れてないもんだから戸惑ったものです笑。で、今度はそれが普通になっちゃって、日本が世界基準のふつうと合ってないなと分かるようになり。。。印鑑の文化はそのままでもいいと思うのですが、せめて世界共通の基準に合わせなきゃならない部分は、混乱を招かないために変えていってもらいたいですよね。日本の国際免許のサイン問題は、誰しもが感じているのではないかと。
Commented by sgmhmmr at 2020-02-24 00:04 x
あれ、オレのは筆記体で書いてたっけなぁ?
と、この記事を読んだ後、ずっと気になっていたのですが、このあいだ出てきました。
1999年に取得した自分の国際運転免許証!

そして最終ページを確認してみたら、、、
ほら、やっぱり、ブロック体で書いてる!!
いくら下手な文字でも、さすがに筆記体とブロック体の判別くらいはつきます。

おかしいなぁと。警察なんて杓子定規なお役所の典型みたいなもんだから、規則に沿ってないとだめだしされるにきまってるのに、、、。
でも、この国際運転免許証で普通に合衆国でレンタカー借りれたしなぁ。

それであれこれとググっていたら、国連のページに出ていました。
("Ch_XI.B.1,2,3" でググったら出てくると思いますよ。まぁ、そんなに暇じゃないんでしょうけど。)

Annex 10に国際運転免許証の様式が規定されていて、
The written remarks shall be written in Latin characters or in so-called English script.
とのこと。” in so-called English script. ” って、script って筆記体のことなのか?と思ってたら、"Ch_XI.B.1,2,3"は英語とフランス語で交互に書かれていて、フランス語のページには
Les indications manuscrites seront toujours écrites en caractères latins ou en cursive dite anglaise.
と出ています。フランス語はちんぷんかんぷんですが、cursive!これは、ずばり、英語でもそのままの単語で「筆記体」なんだと辞書検索して確信しました。
おぉ、やはり、筆記体で書けってことか!

これで納得したものの、ブロック体でサインした自分の昔の国際運転免許証、これ、なんで普通に発給?交付?されたのか、ますます分からなくなりました。
係の人が不案内だったのか?、写真とか貼っちゃった後だしスタンプも押しちゃったし、まぁいいか?って出してくれたのか?
うーむ。

と、またしょうもない独り言コメントを書いてしまいました…。
よっぽど暇なんですね?と言われたら、まぁそうなんでしょうね、としか言いようがないですね…。
Commented by iihanashi-africa at 2020-02-24 22:44
>sgmhmmrさん
いつも念入り調査と深い考察をありがとうございます!!いや~、二つの大きな発見がありました!!まずはラテン文字or筆記体というところ。ブロック体でもいいんですよ。そう書いてある。上の記事の警察庁の回答もそう書いてありましたね。だから書き直しました。

そして、フランス語のindications manuscritesという単語を見て、感覚的にこれは署名のことを言ってないんじゃないかと思いましたよ。

この問題の本質に少し迫ったような気がしました!!
めるし~です。
Commented by sgmhmmr at 2020-02-25 07:55 x
あれ、そもそもワタクシ、論点がずれていたのですね。
なんで署名じゃダメなんだ?というのが論じられているのに、自分は、筆記体じゃなきゃダメなはずなのになんでブロック体でまかり通ったのだろう?という疑問になってました。
あぁ恥ずかしい。

仕事で良く言われるんです。その情報ってホントなの?原文には当たってみたの?と。
そういうこともあって調べてみたのですが、そもそもズレてる!

これもよく言われるんです、公私にわたって。
「キミ、そもそもズレてるんじゃない?思い込みで走り出す前によく考えたら?」

あぁ恥ずかしい、恥ずかしい。
恥ずかしい、こんなアラフィフでホント、すみませんです、はい。
Commented by iihanashi-africa at 2020-02-25 17:32
いえいえ、全く論点ずれていないですよ。なんでブロック体でOKだったのだろうというsgmhmmrさんの疑問があったからこそ気付いたのです。私も日本語で「ラテン文字又はいわゆる英国風の筆記体文字で記載すること」と読んでいたのに、ラテン文字と並列で英国風文字というのがあって、そのどちらかの筆記体という風に思い込んで読んでいました。実は違うんですよね。これ、結構大きな発見だと思うのですよ。だって少なくともブロック体でも筆記体でもいいってことなんですから。

それにネット検索すると漢字でサインしてある国際免許証の写真とかも出てくるんですよね笑。

私も調査が足りなかったのでお恥ずかしい。

毎度毎度ですが本当にありがとうございます~~~!!!
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